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第三回「動物が出てくるサーカスの未来」なお話

サーカスアーティストをしながら、サーカスのことをマニアックな目で愛でるYasuの「ちょっとサーカスなお話」第3回は「動物が出てくるサーカスの未来」なお話です。



2021年11月18日フランスで、より強化された動物福祉法が可決されました。これにより、2024年に、サーカスにおけるトラやライオン、熊やゾウなどの野生動物利用が禁じられ、2026年にはイルカやシャチのショーも禁止されるそうです。


ドイツでは2019年にすでに動物たちのショーが禁じられており、イギリスでも動物を使ったサーカス公演を禁止する法案が可決されています。動物愛護の観点から、いろいろなサーカス団が「動物虐待や!!」と言われて、動物の廃止を余儀なくされています。この流れは止まることなく……加速しています。


しかし、各地のサーカス団からは「そもそも私たちは動物を虐待なんかしてない!これは明らかな恣意的な法律だ!」との主張もあります。


そしてこの法案の心配な問題点として、現在飼育されている動物への対応が定められていないことです。つまり、サーカス団体は動物を飼育しているけれど、出演させることもできなければ、どこかに譲ることもできない、という状況が今後生まれる可能性があるのです。


さらに、この法案で興味深いのが、フランスの農村部で伝統行事となっている狩猟や闘牛が、長年の文化的慣習として擁護され、今回の法律では禁止には至らなかったことです。文化に根付いた行事での動物の利用は可能とされているのです。さらに注意深く各国の法令を確認すると、野生動物が禁止の対象であり、飼い慣らされた家畜やペットは除外されている国がほとんどです。つまり「家畜」や「ペット」であれば「今のところ」出演可能な国がまだまだあるということなのです。


このように見ていくと「野生動物」「家畜」「ペット」それぞれについて理解することが、この「サーカスと動物の未来」の鍵になってくるでしょう。


「野生動物」は自身の遺伝子を残すために、その種それそれが独自で習性や生態を身につけて進化してきました。そのため、人間の感情で良い悪いを決めてはいけません。動物を観察、飼育する目も、「主観」ではなく「客観」であり、長い間飼育し続けることは、野生に戻ることへの悪影響になる可能性があります。つまり、「いつか野生に戻す」という観点を忘れてはいけないのです。

一方、「家畜」はその命自体を人間が利用させてもらう命として飼育されています。そして「ペット」は、人間の心を癒してくれる命として家庭で飼育されています。動物愛護の観点で考えたとしても、ここをしっかりと理解して議論する必要があるのです。


サーカスが大好きな僕にとって、動物が出てくるサーカスも存続してほしいなぁという思いが実はあります。このように現在、動物の出演について賛否のある中、ペットがメインで出演するハートフルなショーがラスベガスにはあるのをご存知でしょうか?


「World Famous POPOVICH Comedy PET Theater」



このショーのホストを務めるのはグレゴリー・ポポビッチさん。アメリカズゴットタレントをはじめとした数々のテレビ番組にも出演する世界的に有名な彼は、実はボリショイサーカスで日本にも何度も来ているサーカス一家4代目です。そんな彼が率いる総勢30匹以上の動物たち(犬や猫だけじゃなく、アヒルやガチョウ、写真のポニーなども出演しています)が繰り広げられます。


リムジンに乗ったペット(全員名前で呼ばれてます。)がレッドカーペットを歩く映像からショーはスタート。幕が開くと、そこは動物たちが楽しそうにアパートや家に住んでいる街の日常の風景が広がります。すると、突然火事が起きます。慌てて逃げる動物たち。逃げ遅れた猫や鳥たちを助けにやってくる消防士の格好をした犬。ハシゴを使ってアパートの屋上に登って猫を助け出す場面などハラハラドキドキしながら心がほっこりします。幕が閉まって場面が転換すると、そこは学校の教室。犬や猫の生徒が先生役のグレゴリーにいたずらしたり、算数の問題を解いて喜んだり、心温まるショーが繰り広げられます。実はそれだけではなく、このグレゴリーさん、超一流のジャグラーでもあります。ハシゴに登ってジャグリング、ローラボーラというめちゃくちゃ不安定な筒の上に立ったりと、サーカスアクトも一級品です。



そんな素晴らしい心温まるファミーリーサーカスエンターテイメントなのですが、その中でも僕が一番大好きなのが、このショーのコンセプトです。これら、楽しそうに舞台上で演じる犬や猫たち、実は保健所に保護されてい子たちなんです。そんな彼らをグレゴリーさんが里親になって保護し、彼のラスベガスの大きな家で愛情豊かに育てられて芸を覚えて、そして舞台に立っているんです。注意深くショーを見ていると、なかなか言うことの聞かない猫ちゃんや、一人で遊びだしちゃう犬ちゃんなんかもいるんです。この子たちを見ているグレゴリーさんの顔がもうめっちゃやさしいんです!!ムチで叩いて恐怖で教え込んでいるようなイメージの真

逆で、動物たちが自由に楽しそうに演じているのす。


劇中の映像でも里親になって家で調教しているところが流れます。楽しくショーを見ながら、ユニークな社会貢献の方法を家族で学ぶことができて、お子さんのいる家庭には最高のショーなのです。是非一度観てくださいね!シルク・ドゥ・ソレイユのような壮大なショーではありませんが身近で動物を見ることができるので、お子さまに必見です。


界各国で徐々に増えています。そんなご時世で、このPOPOVICH ショーは、常設でショーを続けているだけでなく、アメリカツアーも大盛況。未来を創る子どもに動物の保護、動物の命を通して学びを提供してくれるショーということもこのショーが成功している点だと思います。このようなショーは、動物愛護の観点から見ても無くしてはいけないと僕は思います。


動物保護の観点を考える上で、「野生動物」「家畜」「ペット」についてショーを見ることで命のあり方を考えることも大切だと思います。その上で、法の改正を考えてもらいたいなぁと考える今日この頃です。





 Yasu Yoshikawa

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