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第9回は、「Vegas! The ShowにYasuが出演してるかもよ!」という、Yasuのメッチャクチャ個人的なお話

サーカスアーティストをしながら、サーカスのことをマニアックな目で愛でるYasuの 「ちょっとサーカスなお話」第9回は、「Vegas! The ShowにYasuが出演してるかもよ!」という、Yasuのメッチャクチャ個人的なお話です。



Vegas! The Show Location: Saxe Theater inside the Miracle Mile Shops at Planet Hollywood

 2022年8月12日「Vegas! The Show」が2年半のパンデミックの休演を経て、再オープンしました。このショーは、古き良きラスベガスを、素晴らしいライブのビックバンドとブロードウェイスタイルの歌唱力の素晴らしいアクターさんと、きらびやかなショーガールのみなさんとともにお届けする、ザ·ラスベガス!って言う感じのショーです。


 幕が開くと、そこにはかつて栄華を極めたサンズホテルやサハラホテル、スターダストホテルなどの古ぼけたネオンサインが立ち並んでいます。そこへ掃除夫が現れ、観客に向かって、昔の古き良きラスベガスについて語り始めます。そんな彼が、一つの電球をそのネオンサインに差し込むと、その電球が光り、またたく間に舞台は1900年代中期のきらびやかなラスベガスへとタイムスリップしていくというストーリー。モータウンミュージックや、エルビス·プレスリーなどとともに、懐かしのラスベガスを体感できるレビューショーとなっています。


 さて、ここまで読んで、「おいおい!Yasu!!サーカス全く関係ないやないかい!」と突っ込まれている人もいらっしゃると思います。でも実はこのショー、3回の舞台転換の間に幕前でそれぞれ1つずつ、合計3つのサーカスアクトが入っているんです。


 この、パフォーマーが舞台シーンををつなぐスタイルのショーは、実は昔はこれこそがスタンダードで、有名なものでは、バリーズホテルで公演していたジュビリー、リビエラホテルのスプラッシュなどが有名で、観光客にも人気でした。そのため、僕たちパフォーマーの世界では、このスタイルのショーに出演できることが、ある種のステータスでもあります。自分のパフォーマンス一つでその場をつなぐ。簡単そうで難しい!!


 僕自身もこのスタイルは憧れでした。そして、実はサーカスだけでなく、ミュージカルやレビューショーも僕はめっちゃ好きなんです。歌の魅力、バンドの魅力ってサーカスとは違った心を躍らせる魅力が詰まっているって思ってます。そんな魅力の詰まったVegas! The Showに僕はめちゃくちゃ出たかった。なので、初日の次の日のお昼にプロデューサーのDavidにメッセージしました。


Yasu 「再オープンの初日めっちゃおめでとう!めっちゃ嬉しいです。ところで、もしスポット空いてたらパフォーマンスしたいです!いつでも連絡してきてください。いつでも馳せ参じます!」

すると、ほんと30分もしないうちにメッセージが返ってきました。


David 「ありがとう、ところで、今日出れるか?」

???きょ、今日??ちょっと早すぎやろ!っていうか今夕方3時でっせ!ショーは7時からでっせ!リハーサルするには、今からすぐ行かなあかんやん!!一応、準備が必要だけど…… いつでも馳せ参じるよ!なんて言ってしまった手前、無理とは言えへんやん!!


Yasu 「もちろん!今からシアター向かうよ!」

 

実は、このショーが再オープンするよっていう噂が出てから、1940年代の音楽で、幕前3m弱の奥行きの狭いステージでもできる演技を作り練習していました。だから、準備はできているといえばできています。ただ、パフォーマンスというのは、裏方さんとの連携でもあるし、舞台は生き物ですので、現場の「今の」状況次第でも演技可能かどうか大きく変わってきます。舞台上で確認しない限りなんとも言えないんです。とにかく直ぐに劇場に向かいました。


 劇場に着くと

David 「お!こんなすぐに来たんか!でもごめん!実は今日はなんとか大丈夫になったわ!出演は無しで!」


 こういうことはよくあることです。よくよく聞くと、今日出演予定だったパフォーマーとの契約上の問題が発生して出演しない可能性があったけど解決したということでした。ということは…… 今後も僕が出演できる可能性はかなり減ります。

 

ここで諦めたくなかったので、舞台監督にめっちゃ頼み込んで、次の日に1時間だけリハーサル時間をもらいました。いつでもパフォーマンスできるようにというのが表向きですが、心のなかでは「とにかくプロデューサーに見てほしい!!」です。


 次の日、リハーサルをしていると、舞台の状況により、当初作っていた演技を根本的に最初から作り直す必要があることがわかりました。その場で音楽も編集し、なんとか形になるかもしれないと言う状況まで持っていったところで、プロデューサーがやってきました。


David 「お前、何してんねん。リハか?」

明らかに、彼の顔には「お前、今日は出演予定ちゃうぞ。何してんねん」って書いてありました。


こちらも、すかさず、

Yasu 「一応いつでも出られるように準備してるねん」

(ちょっと作り直したから出演できるまで、まだ数日かかるけど、それは内緒。)

しばらく横目で僕の練習を見ていた彼は、


David 「Yasu、お前今日出れるか?」


耳を疑いました。今日って、あと2時間後ですよね?それに、頭の中では演技できましたけど、まだ通しでパフォーマンスできるか今調整してる段階やねん。でも、今「できない」って言ったら次があるか保証はない。ほんの数秒でいろんな事を考えました。


そして、出た言葉は、

Yasu 「も、もちろん!ただ、裏方さんとの連携のリハーサルだけさせて下さい!」


David 「この状況で、できへんなんて言わんよな、そらやるやろw」

僕よりも1枚も2枚もウワテだった……


この言葉の裏には、

(お前、そこまでアピールするんやから、結果出せよ。)

がしっかりと入っていたのです。


David 「よし、今から直ぐリハーサルして!間に合わせるんや!」


そして裏方さんたちに

David 「みんな、今日の3番目のスポットYasuがパフォーマンスするからそのつもりで!今からのリハ次第ではまだわからんけど間に合わせてやってくれ」

ということで、僕はその日にパフォーマンスする権利を得ました。そして、その後の1回の通し稽古でなんとか集中して頭の中の演技を具現化しました。


 さて、幕が開きショーがスタート!!僕の演技の前はエルビス·プレスリーの場面です。舞台袖からめっちゃかっこいいエルビスときらびやかで楽しそうに踊るダンサーさんの演技を見ながら、こみ上げてくるものが!


「こんな素晴らしい演者さんたちの舞台に一緒に立てるんやな…… 」

そう思っていると心が高ぶってきて、もう涙が出てきます。舞台人として、最高に幸せな気分です。ただ、高揚感が半端なくて、パフォーマーとして冷静ではななかったのではないかな?


客席から見たら、おそらく半泣きでめっちゃ笑顔だったと思います。

20年パフォーマーとして活動してきて、5本の指に入るくらい喜びの大きい舞台出演の経験ができました。


 終演後プロデューサーから、

David 「なかなか良かったやん。明日からもよろしくな」

晴れて合格をいただきました。


 このコラムを書いている現在、月曜日と火曜日の出演が決まっています。


 さて、この新聞がリリースされたときにまだ僕はVegas! The Showに出演しているのかどうか??それは、これからの僕の演技にかかっています。


 皆さん、応援よろしくおねがいします!そして、月曜日と火曜日に僕が出演していたら、「あ、今もYasuは崖っぷち楽しんでいるんだなぁ」と思って楽しんでいただけたら嬉しいです。


 今回は、そんなサーカスパフォーマーのちょっとハラハラした日常を垣間見てもらいました。


 ほなまた、来月お会いしましょう。



            By Yasu Yoshikawa

Vegas The Show

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