top of page

第10回は、「自分の売り込み方がゴリゴリしすぎやねん!」なお話

サーカスアーティストをしながら、サーカスのことをマニアックな目で愛でるYasuの 「ちょっとサーカスなお話」第10回は、「自分の売り込み方がゴリゴリしすぎやねん!」なお話です。


V Show Location: V Theater inside the Miracle Mile Shops at Planet Hollywood

今まで、色んな国のパフォーマーさんとお仕事をしてきました。現在も、アメリカ人、ロシア人、ウクライナ人、中国人、エチオピア人、カナダ人などなどとYasuは共演してます。そんな彼らが、オーディションなどで舞台のお仕事を掴み取るときに共通して言えることが、良く言えば「めっちゃくちゃ積極的」悪く言えば「どこまでも失礼なくらい売り込み方がゴリゴリしすぎ!」です。 


 さて、Yasuが出演しているV Ultimate Variety Showには、他のショーとは違って、このゴリゴリ制御のネジが壊れているパフォーマーが多いようです。まぁ、そこにいる僕自身も、もしかしたらそのネジ緩んでるとは思いますw。


 ということで、今日はそんなV Showパフォーマーのゴリゴリエピソードを第3位からご紹介いたします。


 第3位は、V Showのトリを飾るスケーター第3位は、V Showのトリを飾るスケーターのARATAです。彼らは、サーカス家系の第7世代で、サーカスコンテストの賞を総なめしてラスベガスにたどり着いた凄腕のパフォーマー。V showに出演する前は、ラスベガスで今飛ぶ鳥を落とす勢いのショーカンパニーSpiegelworld「Absinthe」の超目玉アクトとして君臨していました。 


 そのため、いろんなショーから引っ張りだこでいろいろな単発のイベントショーのオファーが絶えませんでした。しかし、その時 「Absinthe」とは、「別のショーに出演してはいけないよ」という契約書にサインしてしまっていたため、イベントやショーを断り続けていました。そんなある日「そんな契約もういらん!出ていく!」と言ってライバルショーであるV Showのプロデューサーのところに行き、「いつでも別のイベントショーに出演しても良い。その代わりちゃんとV Show にレギュラー出演する。」という契約を結ぶことを条件にV Showに移籍しました。V Showのプロデューサーとしては、「目玉のアクトを手に入れられるんやったら、少々出演日数が少なくなっても構わん!」というくらい彼らのことがほしかったので、願ったり叶ったりでした。これは日本のプロ野球で言うところの、巨人の4番バッターがいきなり阪神の4番になった。という感じです。この契約の噂が流れた当時、パフォーマーの世界では「ライバル会社に移籍した!!」と、かなり大きな事件になりました。今でも彼らはV Showに出演しながら、別のイベントにも引っ張りだこです。さらに自分でイベント会社を運営し、パフォーマー派遣会社を大成功させています。


 さて、第2位は、ストラップデュオアクトのAmpedです。(残念ながら、パンデミック後に解散してしまったので今はもう見ることができません)彼らがV Showに出演が決まったのは、オーディションではなく、プロデューサーへの直談判だったそうです。

Amped「俺らな、いきなりV Showのオフィスに行って、直接映像をプロデューサーに渡してん。ほんで、絶対俺らおもろいアクトするからリハーサルさせてくれ!って言ってん。まぁ俺らシルク·ドゥ·ソレイユにも出てたし、実績はあったから、プロデューサーのDavidは気に入ってくれてんけどな、待っても待っても連絡来なかってん!だから、直接劇場に行って、ステージマネージャーに頼んで練習させてって言ってん!」

Yasu「え!!そんなん無理やろ!だって出演決定してるわけじゃなかってんやろ?」

Amped「そや、だから門前払いやったわ。でも何回も何回も劇場に行ったよ。だって俺らは演技に自信あったから。5回目くらいやったかなぁ、ようやくイヤイヤやけど練習させてくれてん。そしてそれをDavidに見せて、それでやっと出演が決まってん。時間かかったわ!」

だったそうです。


 このゴリゴリ感も確かにすごいけど、ステージマネージャーとプロデューサーも、こういった熱意を汲み取ってくれるところもすごいですね!ちなみに、今では彼らのせいで、オフィスはもう直接プロデューサーと連絡が取れないようになっています。(ちなみにYasuは定期的にプロデューサーのオフィスに行って近況報告をしています。「はよ帰れ」って言われてますが。)


 それでは、栄えある第1位は…… マスクコメディアンのRussです!!! 彼のアクトは、4人のお客さんを舞台に上げて、その人達に面白いマスクをしてもらい、4人をいじり倒すというコメディーアクトです。良くわからないでしょ??言葉では全く説明できないし、映像で見てもわかりにくいし、劇場でその空気感の中で見ないと全くわからないアクトです。そんな彼、V Showに入る前は、アメリカ東海岸に住んでいました。何度も何度もプロデューサーのDavidに連絡していたけど、全く連絡が返ってこなかったそうです。その当時のことをプロデューサーのDavidが僕に話してくれたことがありました。

David「最初Russから連絡あったときな、またしょうもないコメディアンが連絡してきよったわって思ってん。俺もこの世界に入って長いから、1000以上のいろんなパフォーマーを見てきた。雰囲気であかんアクとやって思ったから、映像も見んかった。そしたら、あいつ東海岸から西海岸のラスベガスまで来てん。びっくりしたわ。ほんで俺に言い寄ってきてん。

『俺のアクトはめっちゃおもろい。でも、説明がしにくいねん。お客さんがいないと面白さがわからへんし、それを生で見て貰う必要があるねん。だから、1回だけチャンスをください。出演料は要らない。無料でいいから、ステージに立たせて下さい!!』って。わざわざ東海岸から来て言ってくるんやし、ここまで自信満々で言うんやから、1回だけチャンスあげてん。半信半疑で、Russの演技を劇場の一番後ろから見たよ。俺な、椅子から転げ落ちるかと思うくらい笑った。あのとき、自分の見る目も間違うことあるんやなって思ったわ。新しい笑いと演技やった。それで即その日から契約したんや。」

その後、直ぐにRussはラスベガスに移住し、現在まで15年以上V Showに出演しています。


V Show マスクコメディアンの Russ


 エンタメの世界では、時にはゴリゴリ行かなあかんときもあります。先月号の僕が取った行動も、このような経験をしたパフォーマーから話を聞いていて、自分もゴリゴリ行かなあかん!という思いからの行動でした。周りとの協調性を重んじる日本ではこんなことしたら絶対アウトやん!な生き残り戦略ですが、このようなゴリゴリエピソードは、パフォーマーの世界では日常茶飯事なんです。でも、一つ言えることは、みんな言うだけあってパフォーマンスはピカイチです。そして自分にめちゃくちゃ自信がある。アメリカでチャンスを掴むには、実力だけでなく、このように自信満々にゴリゴリ制御装置のネジを緩ませることも大切なんやろうなぁ。。。って思います。


 今回は、正規のオーディションだけではなく、自分から体当たりで仕事をつかみ取りに行くパフォーマーがラスベガスにはたくさんいるよ!っていうお話でした。


 そんなアメリカで生き残ったパフォーマーが出演しているV Showにも是非お越しくださいね。          


 By Yasu Yoshikawa

bottom of page