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執筆者の写真Las Vegas Japan Times

宇山智哉 在サンフランシスコ日本国総領事

UYAMA, Tomochika

Consul-General of Japan in San Francisco


外務省本省、在外(スイス・ジュネーブ、エジプト、フィリピン、韓国)で WTO やEPA などの貿易交渉、G7•G20 サミット、法人企業支援、政府開発援助等、経済外交を担当。元外務省大臣官房審議官(経済局・中南米局)、元外務省経済局国際貿易課長、 元外務省経済局中南米局参事官。1986年、一橋大学法学部卒業、外務省入省。山口県出身。



(写真)映画上映の前に観客と歓談する宇山総領事

 

5月にサマリンのユダヤ人寺院で上映された映画「Persona Non Grata: The Story of Chiune Sugihara (杉原千畝 )」が、6月26日(水)フラミンゴ·クラーク·カウンティ図書館のシアターでアンコール上映されました。リトアニアのカウナス日本領事館で、ユダヤ人難民にトランジットのビザを発行し、ス6千人以上のユダヤ人を救った杉原千畝を描いたもの。観客の中には、映画の中でユダヤ人難民がイスラエルの国歌を歌い出すと一緒に口ずさんでいた方もいました。


今回の上映会には、在サンフランシスコ日本国総領事館の宇山智哉総領事も参加され、集まった人たちと一緒に映画鑑賞をされました。時代背景や国も違うけれども、「総領事」という同じ立場の方がこの映画をどのようにご覧になるのだろうか?ご多忙の総領事のラベガス訪問中、貴重なお時間をいただいてお話を伺いました。


***


LVJT : 今朝はラスベガス市役所を訪問されて いらしたそうですね。イノベーション地区をどう思いますか?

宇山(敬称略) :イノベーション政策の力が入っているなと思いました。スマートシティと一口にいっても様々な要素がありますがラスベガス市民の安全を守るために新しい技術を試したり、コストを安くしたり、いろいろテストしながら努力をしているようです。ラスベガスでは自動運転車もかなり走っていますね。人は一応乗っているみたいですが、あれはすごいなと思いました。

LVJT : 日本企業ではNTTやHITACHI がラスベガス市のイノベーション地区の取り組みに参加しています。


宇山:NTTさんはネバダ州とも契約を結ばれ活発に交流されているようです。領事館もお話しがあればできる分野で支援をします。去年は、ネバダ州知事(ブライアン·サンドバル前知事、現在はMGM)が日本に行かれていますね。最近は、クリス·サンチェス氏(ネバダ州知事経済開発局の暫定理事)が日本に行かれています。そういう地道な活動が、新しい企業を呼び込む力になるかもしれませんね。人と人のつながりがあってこそ、その中から生まれるものがあります。NTTさんの契約のような動きが始まると、ほかおの日本の企業さんも関心を持たれるということもあるんじゃないでしょうか。


LVJT : つい先日リノで行われたネバダ·グローバル·サミットに参加されたそうですが、いかがでしたか?

宇山:ネバダ州はイノベーションについて大学と連携して新しいビジネスを生み出そうと、かなり力を入れていますね。パネリストの一人として、私はネバダ州と日本の関係についてプレゼンテーションをさせていただきました。まず、ネバダにおける日本人ですが、1910年ラスベガスの人口が2000人だった頃、すでに日本人が62人いらしたという記録があります。2017年には日本人は3588人、日系人は2万人ほどに増えました。また、日本はネバダに投資している外国のうち4番目に多くの雇用を生んでおり、貿易では、日本はネバダからの輸出先としては世界で8番目、輸入元としては7番目になっています。ネバダ州からの輸出先としては世界で8番目、輸入元としては7番目になっています。ネバダ州からの輸出品目は農産物、採掘関係、そしてコンピューターとか電子製品なども結構多いです。ネバダを訪れる観光客の多さでは日本は6番目、2017年には22万9100人の観光客が日本から来ています。そのうちの75%がラスベガスを訪れていて、日本人にはおそらく「ネバダ」より「ラスベガス」のほうが馴染みがあるでしょう。

ビジネスも盛んになっていまして、特に年一度のCES ですね。2018年には日本から6400人が来ていて3番目に多い国となりました。北ネバダにはテスラのバッテリー工場ギガファクトリーに、パナソニックが大きく関わっていますし、NTTがスマートシティーの技術を提供し、ネバダ州とラスベガス市との関係を培っています。そういうことを皆さんに知っていただきたいと思います。そして文化交流です。人間と人間のふれあいはすごく大事です。ラスベガスの皆さんはもちろんご存知のとおり、絆の春祭りと10月に行われる秋祭りがあることもプレゼンでお伝えしました。私は去年は秋祭りに来ることができませんでしたが、今年は是非来たいと思っています。


LVJT : 今年の秋祭りは初めてストリップで行われるので華やかだと思います。是非お越しいただきたいです。


宇山:秋祭りは去年はヘンダーソンで行われ、たくさんの方達がみえたと聞いています。昨日、ヘンダーソンの市長さんにお会いして御礼を申し上げてきました。今年はヘンダーソンではないけれどもラスベガスバレー内でやることには変わりはないので、是非お越しいただけるようにお誘いしました。それから、補習校についても触れました。100人以上の子供さんたちが学んでおられるということです。この補習校があるということ自体が、日本との繋がりが大きいということだと思います。補習校は、日本人のお子さんがアメリカの教育を受けつつ、 日本に帰国した時に日本の学校教育についていけるようにするという目的が主ですが、ラスベガス学園はそれに加えて、現地にずっと住んでいられる方のお子さんで、日本語をもうちょっと勉強したいというような要望にも応えているようなので、そうした文化交流があるということもお話しました。

LVJT : ラスベガスやヘンダーソンに日本の姉妹都市があるといいと思いますが。以前、計画が持ち上がったこともあったようですが、まだ実現していません。


宇山: そうなんですね。姉妹都市になろうといって始めるよりは、実際の交流があってこそだと思います。この前、ネバダ州の知事さんとお会いしたとき、これからはもっと文化交流でネバダ州と日本との絆を高めたいと期待されておられました。特に若い人の交流をやりたいというご意見でした。それから、日本との姉妹都市というのがネバダにはないということにも触れました。いろいろ聞いてみますと、姉妹都市をやると税金がかかるんじゃないかと意見をする人がいますと。そういう大々的なものを最初から考えるのではなく、最初は大学交流や、高校生交流でもいいですし、草の根的な交流から始まるのがいいんじゃないかと思います。すでにある交流が続くことで、関係が段々深まっていき、そろそろ姉妹都市になりましょうという形です。カリフォルニアには100を超える姉妹都市があります。高校生とか中学生の交流を中心に毎年何人もの学生がアメリカと日本の行き来をされます。アメリカの州の予算を使うというよりも、ボランティアでホームステイなどをする民間の自主的な参加、協力の中でまかなっておられるようです。そういう何十年も経験があるところがどうやっているのかを参考にしてみおることをお勧めします。



LVJT : それはもっともなご意見です。


宇山: 何かのきっかけから始まったことを何年もやっていると人間関係が段々出来上がって、30年、40年と続けているところは、初代の方がご高齢になると「おじいちゃんがやっていたから」と孫が引き継いでくれたりする。そういう人の繋がりの中で、市議会議員になる人が出てきたり。そうするとわかっているので、サポートをしてもらえるようになる。そういう自然な流れだと長続きするのかと思います。


LVJT : 日本の市町村の中には、ラスベガスはギャンブルの町だから関わり合いたくないという意見もあるかと思います。


宇山: そういうこともあるかもしれませんね。まだお互いをよく知らないところがあるわけです。ネバダはそういう場所もありますけど、実は日本人を含め、多くの方が住んでおられますし、日本人の補習校もあって子供たちも学んでいる。というようなことを知ってもらう必要があります。あと、ネバダ州には先ほど申し上げたようにいろんな日本のビジネスの方もいらっしゃる。最初は大人が行き来して「ああ、こういうところだったら、子供を連れて行ってもいいね」という日本側の納得のいくもの、地元の方とかとネバダ州の繋がりを持ちたいと思うようなことがみつかるといいかと思います。 LVJT : そうですね。実際、すでにいろいろと草の根で関わりを持つ方がいらっしゃるようです。ラスベガスはエンターテインメントのメッカということで目指してくる方も多いようですし、スポーツ関係も。それらのサポートをされている方達もいらっしゃるようです。


宇山: そうですか。姉妹都市という型にはめなくても、芸術交流とか柔軟な枠組みを作ることでしょうね。

LVJT : そうですね。ラスベガス·ジャパンタイムズもそういう意味で協力していきたいと思っています。


宇山: 逆の発想で、ラスベガスにいる方が芸術を頭に入れた語気に、日本で行きたい町というのはどこなのか?とか、そういう発想もあるかと思います。こちらで活躍しているアメリカ人の芸術家が入れ込んでいる日本の街というのはどういうところかなどに着目するのもよいかと思います。芸術姉妹都市とかね。


LVJT : 面白いですね。アート関係はラスベガスではMGMなども力をいれているところだと思います。宇山総領事はご出身はどちらですか?


宇山: 山口県です。

LVJT : 政治家が多いところですね。話は変わりますが、宇山総領事は松尾育英会の奨学生だったとお聞きしました。昨日の映画の中で、杉原千畝が若い時に学んだハルビン学院の仲間たちとの繋がりがでてきましたよね。リトアニアで杉原千畝総領事に日本を通過するビザを発給してもらったユダヤ人難民たちが、日本海を渡る船に乗るのを拒まれたとき、「本音では助けてあげたい」と述べるJTBの大迫さんに、「私が責任を持ちましょう」と乗船許可を出した根井三郎総領事は杉原千畝と同じハルビン学院の卒業生でした。映画おを見ながら、宇山総領事は縦横の繋がりの深い松尾育英会の奨学生とのことで、何か映画のお話と重なるようなものがあるような気がしましたが、育英会のお話を聞かせていただけますか?


宇山: ありがとうございます。この育英会というのは、松尾國三先生という貧しい家にお生まれになられたため学校に通えず、興行の世界に入られて大成功されたという方が作ったものです。今はディニーランドがありますが、そのちょっと前の世代には日本ドリームランドというのがあり、横浜ドリームランドとか、奈良ドリームランドとかを作られた方です。その他、戦前から歌舞伎の興行をされ、サンフランシスコのジャパンタウンに歌舞伎シアターを最初に作られました。戦前のサンフランシスコとか、サクラメントで、日本を恋しく思っていた日本人、日系人のために歌舞伎を持ってきたのです。最初は大成功されたようですが、残念ながら、歌舞伎の公演は2年くらいでうまくいかなくなったようです。そのカブキ·シアターは今は映画館です。それから、日本と中国が国交正常化する以前から、中国で歌舞伎を上映されていました。京劇の方との交流も多く、中国人なら誰でも知っている有名な梅蘭芳(メイランファン)とも交流されていらっしゃいました。

松尾先生は、ご自分が勉強をすることができなかったので、大学に行くことが経済的に困難という学生に、寮を提供して、食事も与えて、学費も払ってくれる給付型の奨学金を作りまして、私はたまたまラッキーなことにそこで4年間お世話になりました。私が寮にいた頃、今お話しした、メイランファンのお孫さんもいらしたんです。一緒に2年ほど寮生活を共にしました。寮にはいろんな大学に通う学生がいました。人数は多くなく、OB会などを通じて先輩方との交流もあり、お世話になっておりました。松尾育英会事態は奨学金を出しているところですけれども、松尾國三先生はそれに加えて、松尾芸術財団という伝統芸能の振興や教育をする財団も作りまして、そちらで活発な活動をされていらっしゃいました。


LVJT : 給付型ですか。すごい競争率だったのでしょうね?


宇山:私は選考に関わったことはなかったので、よくわからないですが、おそらく申込みは多かったかと思います。


LVJT : 山口から東京に来て勉強しようと思ったとき、何か目的はありましたか?


宇山:なんていうんでしょうか、せっかく機会があるのであれば大学に行きたいと思っていましたし、出来れば外国に行って、国際関係に携われる仕事ができたらいいなと思っていました。


LVJT : それはどういう理由からでしたか?


宇山:日本に生まれ育ちましたけど、やっぱりテレビとかの影響もあると思いますが、学校の勉強では特に地理が好きでして、こういうところに行ってみたいとかよく思っていました。そういう感じです。日本と全然違う国に行ってみたいとか、そこの人たちと交友してみたいという興味を持っていました。


LVJT : 外国に興味を持たれていたんですね。日本のことを伝えたいという興味ですか?それとも未知の世界への好奇心でしょうか?


宇山:好奇心のほうが多かったです。まあ、何も知らなかったですから。


LVJT : その好奇心から始まって、見事に総領事という責任のある立場で海外に来てお仕事をされるようになるというのはすばらしいです。

宇山:大学生の時に初めてアメリカに来てホームステイをしたのがサンフランシスコの側のマリン·カウンティーでした。サンフランシスコは夏でも涼しく、爽やかな印象が今でも忘れられません。その時お世話になったホストファミリーには、総領事としてサンフランシスコに来てすぐに挨拶に行きました。こういう方々とまた交流できるといいなと思っていましたが、まさか総領事になってここに赴任できるとは思っていなかったので。

LVJT : 凱旋ですね!


宇山:いやいや、ご縁のあるところだと思っています。全般的に懐かしいところだと感じます。


LVJT : 話は変わりますが、映画の主人公である杉原さんのことはどう思われますか?

宇山:私も当時の状況をものすごくよく知っているわけではないのですが、当時の日本はドイツが同盟国でしたから、杉原さんがやられたことは、映画で観る限りではかなり危険を伴ったことだったと思いますし、勇気のある行動だったと思います。


LVJT : 杉原さんのことを知ったのは、昨日もスピーチで触れていらっしゃいましたが、後になってからですか?


宇山:ええ、外務省に入った時は全然知らなかったです。


LVJT : 外務省の中で語り継がれた方ではなかったわけですね。

宇山:外務省の先輩から杉原さんのことを聞いたことはまったくなかったです。むしろ、だいぶ経ってからこういう人がいたと知ったのはテレビ番組や出版された本などからですね。


LVJT : 史実を伝える本や映画というのは、有意義だと思います。


宇山:杉原千畝さんはまだ多くに知られていないという気がしていますので、こういう形で我々が上映会を開く意味があるのかと思っております。サンフランシスコ界隈も我々主導でやる場合もありますが、ユダヤ人団体や日系人団体が主催する場合もあります。我々も出来る限りサポートをしていきたいと思っております。杉原さんのおかげで、特にユダヤ人のコミュニティの方と深いお付き合いができるようになりまして、非常にありがたいと思っています。

LVJT : 映画に出てきますが、ビザを出した杉原さんだけではなく、杉原さんと同じハルピンの学校に行かれた方達が、旅するユダヤ人難民を救うキーポイントになっていて、それぞれの立場で人道的な精神を貫いた方々がいたというのも映画で知りました。その辺の繋がりが、すごいと思いました。


宇山:私は杉原さんが通った学校に関してはよく存じておりませんが、建学の精神が映画の中で述べられていたのが印象的でしたね。


LVJT : はい、「人のお世話にならぬよう、人のお世話をするよう、報いを求めぬよう」という。


宇山:そういうモットーがあってそれが学生さんに浸透しているのがすごいですね。


LVJT : 宇山総領事はモットーのようなものをお持ちですか?


宇山:いや、モットーというようなことではないんですけど、出来るだけ、何事にも挑戦していきたいということをいつも思っています。難しいことがあってもそれを頑張ってやっていきたいということをいつも自分に言い聞かせています。あまり出来ていないような気もしますけど(笑)


LVJT : 総領事はこれまでいろいろな国に赴任されていらっしゃるんですよね?


宇山:ジュネーブが最初です。その次にエジプトの大使館に行きまして、日本に戻ったあと、フィリピン、韓国、またジュネーブへと移動し、今のサンフランシスコ総領事館です。サンフランシスコに来る前は、中南米局と経済局を兼任の外務省大臣官房審議官でした。中南米局長と経済局長の変わりに国際会議に行ったり、国会議員の先生に説明をしたりというような感じの仕事やっておりました。

LVJT : すごく複雑なところだと思います。アメリカでは移民の問題がありますが、中南米の国々からアメリカを目指して来ています。それぞれの国が経済的な問題などを抱えていることもアメリカの移民問題につながっているわけですよね。そういった問題にも関わるお仕事をされてきたということですか?


宇山:はい。経済局の一つの仕事としてやらせていただいたのは各国の首脳が集まるサミットです。G7とかG20とかですね。今、大阪でG20開催中ですが、私が出た何回かのサミットの中で取り上げられたのは、シリアの大量移民の問題のことでした。ヨーロッパの政治を変えるような大きなインパクトのある問題でした。当時、移民を含めて、外国から来る人の流れというのはきちんと冷静に捉えなくてはいけないと、ある種の合意を作りましょう、という議論が盛んに行われていました。首脳宣言の合意文書に書かれているんですけど、各国の立場が違うので、外国からの移民というのはいろんな意味でポジティブだという意見と、あまり急激にこられても受け入れ国で大きな問題を起こすので、きちんとある程度の規制を作らなければいけないという意見など、合意に至るまでに多くの議論がありました。そのバランスを保ち冷静なコンセンサス(合意文書)を作るということをしていました。実際にはG20で文書ができれば簡単に解決するというような問題ではないんですが。

LVJT : もちろん。


宇山:移民を出している国と受け入れている国との立場が違いますので、首脳を含めて、違ったものの見方をお互いに議論していますと、グローバルにみるとこういう風にみえるのか、という認識を持つことが出来るという意味で大事なことだと思います。


LVJT : 同じ国の人たちでも意見が分かれると、話し合いが難しくなりますが、世界の様々な価値観を持った人たちが、問題解決の話し合いをし、意見が割れてどちらも譲り難いという場合、どういう対応をするんでしょう?


宇山:そういう意味で議長国というのは立場上難しいです。総理も大変ですし、その下で事務方が文章を取りまとめるんですが、それも大変です。伊勢志摩で行われたG7サミットの時は、我々も議長国の経験をさせていただきましたが、G7は大体、考え方が同じという前提なんですけど、それでも随分意見が割れたことがありました。最後は自分の国の立場を離れて、G7ならG7、グローバルならグローバルな目で見て、こうあるべき、という共通のものを見出す。そうやって最後はみんなの協力を得てして、なんとかまとまったという感じがします。


LVJT : 日本的な「和を以て貴しと為す」という感覚ですね。


宇山:そうですね、国際社会には必要なことだと思いますね。「和を以て貴しと為す」特に外交官の間ではそうです。特に我々は協力をしてまとめなければいけないのでそういうことです。その代わり多数決ではなく、コンセンサス(合意)を得る必要がありますので、どうしても困るポイントがあると、みんなで協力をしないといけないし、ある国が「これを書きたい」といっても他の意見が違っていると、それは難しいと言わないといけないこともあります。


LVJT : 最近は日本に来る外国人が増えたり、日本も大きく変化しているように思います。総領事の考えるこれからの日本というのはどうなると思いますか?


宇山:それは非常に大きな話ですね。日本の将来を考える時には、やはり鎖国政策のような外国との関係を絶って将来の日本を考えることは難しいと思います。ビジネスもこれだけ国際的になっていますし、テクノロジーも発達して、これからの日本というのは世界の中で協力をしたり、世界でビジネスをしていくということだと思います。今年の4月から新しい入国管理法の改正等もありまして、外国人の方も今後もますます増えていくと思いますし、これまでの伝統的な日本人とは違った人が増えると思います。そういう中でダイナミックなものが生まれたり、新しい日本の文化が生まれたりすると思います。

 場合によっては、日本人が古臭いと思って、忘れられたような行事を外国の方が見出して、復活していくというようなこともあるんじゃないかと。例えば、伝統工芸の世界で、お弟子さんがいなくなってどうしようか、と困っていたところにヨーロッパから来た人がその工芸に惚れ込んで後継になったりするということも実際にあります。ですから、外国との交流があることを日本にとって問題があるとネガティブに捉えるのではなく、外国との交流から学ぶことも多いですし、外国の人が日本の良さを見出してくれることもあるとポジティブに捉えるのがいいのではないかという感じがしています。そういう意味で、外国から日本に留学に来てくれる人が増えることを願っています。


LVJT : 最近アメリカン航空が羽田ーラスベガス間の直行便の申請届を出しましたが、残念ながら通りませんでした。


宇山:残念でした。ラスベガスの方には直行便があると便利ですし、日本との距離も近くなります。今回、実現出来なかっのは、そういう意味では残念ですね。こちらに住んでおられる日本人や日系人の方とか、あるいは日本企業に限らず、日本と商売をされているこちらのビジネスの関係者とか、あるいはネバダ州は日本と関係に関心のある地元の方がいろいろな形で今後も働きかけていくというのがよろしいのかと思いますね。


LVJT : ラスベガスを拠点にする日本の企業は少ないので、その辺も関係があるのかと思います。


宇山:そういう問題意識は州政府の方も持っておられるみたいです。日本からみますと、やはりラスベガスは観光スポットという印象が強烈に強く、それ以外の側面、どういう方がいらっしゃって、どういうイノベーションに関して政策を推進されているのかとか、ラスベガス以外にどういう町があるのかとかですね、ネバダ州全体のことについて理解する、体験する、スポーツも含めて人間同士が交流する、というところを改革する余地がまだまだあるように思います。観光地に観光客が来るということ以外のところですね。昨年、NTTさんがラスベガス市、ネバダ州と新しい技術を使う通信の分野で新しい契約を結ばれたのは非常に良いことだと思います。日本企業の関心を引くきっかけになり、今後の発展のスタートになりうるのではと思います。先ほど述べました学生交流とか、大学交流とか、あるいはまた芸術交流でもいいんですが、そういった、ラスベガスの観光以外の側面のネバダ州の姿を日本人に体験してもらえるような工夫を今後していったらいいと思います。


宇山:今日のラスベガス市の方もテクノロジーの発信地として、他に行かなくても、ここから全米に通じるというプレゼンテーションをされていましたけど、そういう意気込みが素晴らしいと思いますし、我々もそういう経済の企業支援の観点からも、もう少し深くみていきたいなと思います。総領事館ができることはあまり多くはないのですか、関心を持ってやっていきたいなと思います。


LVJT : 最後にラスベガスの方達にメッセージをお願いします。


宇山:ラスベガスには芸術家の方もいらっしゃいますし、皆さんいろんな理由があってラスベガスにいらっしゃっていると思います。非常に有名な町でもありますし、ここで日本人の一人一人が活躍をされるインパクトというのは大きいと思いますので、是非、それぞれのやりたかった目的を達成していただきたいと思いますし、ビジネス以外のコミュニティー活動もいろいろ頑張っていらっしゃるかと思いますし、昨日の映画の鑑賞会には絆グループの方達に非常に献身的にご活躍いただきました。そういう形で日本のやはりラスベガスコミュニティーの中で、協力して、発展をしていくことを、それを一人一人のあるいは日本企業の信頼と活躍の場となると思います。よろしくお願いしたいと思います。総領事館としては、こちらにおりませんが、キャスリーンブレークリーさんが非常に活発に活動を行なっていますし、特に秋祭りは今年は力を入れて頑張っていますので、よろしくお願い申し上げます。


LVJT : いろいろなお話をありがとうございました!


 ***


宇山総領事はやさしそうな目で質問に丁寧にお答え下さいました。特に姉妹都市や直行便のフライトのことなどは、地域の人たちが柔軟な発想を持って、時間をかけて対応するべきという親切なご意見をシェアして下さいました。総領事という責任のある立場を踏まえながら、ラスベガスのことをいろいろとお考えになり発するお言葉は、積み重ねて来た経験があってこそだと思います。サンフランシスコ総領事館に赴任早々、絆の春祭りにお越しくださいましたが、今年の記念すべき秋祭りにも是非参加されて楽しんでいただきたいと思います。


名誉総領事キャスリーン·ブレークリーのジョークに微笑む宇山総領事



文·写真 Noriko Carroll

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